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槇野知宏

Author:槇野知宏
宮崎県児湯郡生まれ。
宮崎県児湯郡在住。

「名探偵コナン」
「まじっく快斗」
「BLACK LAGOON」
「艦隊これくしょん」
「ファイアーエムブレム」シリーズ
「ペルソナ」シリーズ
(特に3と4)
「マクロスF」
「パワプロ」シリーズ
「田中芳樹」
「池波正太郎」
「司馬遼太郎」
「有川浩」
「TUBE」
「山本正之」
「NO-PLAN」
「クラシック」
「プロレス」
「中日ドラゴンズ」
を偏愛する会社員
その実態は、単なるオタク。

年を取る毎に深みにハマってますが、これも人生、問題ない、と開き直ってます(笑)

PASSの掛かっている日記(小説)につきましては「PASSについて」をご覧下さいませ。

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2011/11/21 (Mon) 13:44
FLY ME TO THE MOON

 時計の針は既に午後六時前。世間一般的に夕食の支度でドタバタとする時間帯。
台所でお義母さんと二人で夕食の準備をしていると、娘が台所へやって来て横から調理台をのぞき込んだ。

「お母さん、今日の料理は豪華だね」
「今日はお母さんの誕生日で、お父さんが帰ってくるからよ。恭子ちゃん」

先月から快斗はアメリカへ仕事に行っていて、今日が帰国の予定。
一時間以上前に成田空港から“今から帰る”コールがあったばかりなのだ。

「あ、そうか。でもお父さんとお兄ちゃんの嫌いなお魚さんがあるけど良いのかな?」

お義母さんの答えに顔を輝かせた娘だったが、最大の懸念を口にする。

最大の懸念―――それは快斗&息子・北斗の魚嫌い。
魚料理を前にして、何で食卓に出すんだよ?、と、いう表情を浮かべた後、同時に箸をつけて口に入れる。
容姿や喋り方は快斗そっくりな北斗なんだけど、二人が顔をしかめながら魚を食べている表情なんかも寸分狂いがない。
そんな光景を目にして、青子はお義母さんと顔を見合わせて苦笑しているが。

「でも何でお父さんもお兄ちゃんもお魚さん嫌いなの?恭子、お魚さん大好きなのに」

恭子の疑問に答えようとした瞬間、青子の視界に入ったのは料理が並べられているテーブルの下から生えてきた手。
気付かないフリをしていたら、その手は潜水艦の潜望鏡みたく左右に動いて何かを探していたかと思うと、テーブル上の皿にある唐揚げ2個を取ってテーブルの下へ下がっていく。

「北斗っ!」

即座に愛用のモップ片手にテーブルの下を見れば、息子が揚げたての唐揚げを食べて口に動かしている光景が飛び込んできた。

「にゃあに、母ひゃん(ぱかんっ)・・・ってえ。な、何すんだよっ!」

モップで叩かれてなお、唐揚げを口から出さないのは食べ物を大事にする北斗の心意気の現れだろうけど、日常茶飯事と化したつまみ食いに関してはいただけない。

「何すんだ、じゃないでしょ!あれほど言ってるのに、何でつまみ食いをするの!!」
「いや、それは唐揚げが、美味しいから食べてごらん、って、オレに囁いてたから。やっぱ期待に応えてやらないといけないでしょ?」

こういう言い訳を聞いていると、ホント快斗がつまみ食いしてる時の言い訳に似ているんだよね。
昔も今も1個、2個とつまみ食いしては北斗みたいな言い訳してるんだけど、それじゃ北斗って父親のマネしてるって事?

「唐揚げ食べちゃった分は、北斗のお皿から減らしておくからね」
「えーっ、それ何だよ?食べ盛りの息子を栄養失調にさせるのは人道に反すると思うぞ?」
「唐揚げ二個減らしただけで栄養失調になるわけないでしょっ!」

いつものように北斗と親子マンザイをしてると、聞き慣れた声がマンザイを中止させた。 「二人とも、何やってんだ?ま、ある程度は想像出来るけどな」
「あ、お父さん。お帰りなさい」
「あら、快斗。お帰りなさい」

真っ先に気付いた恭子が快斗に飛びついて、お義母さんが挨拶を交わす。

「ただいま。恭子、良い子にしてたか?」
「恭子、良い子にしてた」

娘の声に頷いた快斗の顔はまさに父親の顔をしてた―――ちょっと親バカという色に染まってたのは言うまでもないけど。
廊下に置いてある自分の荷物を物色してたんだけど、困ったような表情をして立ち上がった。

「おっかしいなぁ。恭子に買った土産、アメリカに忘れてきたかな?」
「えーっ、恭子楽しみにしてたのに・・・」

みるみる涙目になる娘の顔を見た快斗は恭子を抱き上げて何事かを囁いている。

「ホント、お父さん?」
「ああ、間違いない。そろそろ来る頃だな」

快斗がそう言った瞬間、何かが食卓の椅子に落ちてきた音がしたので振り返ると、恭子が使用している椅子の上には大きな黄色いクマのぬいぐるみ。
マジックを使用したのは分かっているけど、さっきまで全く無かったものが急に現れたので驚くのは当然。

「言ったろ?オレはサンタクロースと友達だから、彼に速攻で送ってきてもらったんだよ」
「わあっ、ホントだ・・・お父さん、ありがとう」

再度抱きつく娘の頭を愛おしそうに撫でる快斗の横で、北斗が揉み手をしながら何事かを口にしている。
どうやら妹のお土産が予想を超えてたため、自分のそれも期待以上なものだと考えているんだろうけど、快斗って一癖あるから簡単に渡すとは思えない。
案の定、北斗の、お土産は、という質問に対する快斗の答えも人を食っていたけど。

「お土産?そーいや何か聞いてたような気がするけど、何だったかな?」
「父さん、物忘れが酷過ぎるんじゃねえの?」

みしっ。

帰国早々の父親からゲンコツ一発。あれほど、余計な事は言うな、って、教えてるのに、何で言う事を聞かないのかな。
こういう展開になると親子マンザイが始まるのよねえ。そう思ってたらやっぱり始まった。

「・・・ってえなあ。幼気(いたいけ)な息子に何て事をするんだよっ!」
「やかましい。父親に面と向かって、物忘れが酷い、と、言うとは良い根性してるじゃねーか?」
「恭子の土産は買ってきてオレは無視かよ?そーいう贔屓が家庭内不和を招くの知ってんのか?」
「ほぉ・・・じゃ、自分のズボンのポケットに手を突っ込んでみな」
「もうポケットに入ってるってか?んなバカな事ねー・・・って、マジ?」

ポケットに手を入れた息子の顔が“信じられない”という表情をし、一方の快斗はイタズラ小僧のような笑いを浮かべている。
その手には野球のボールが握られており、ボールにはサインペンで何か書かれてあった―――それは大リーグで活躍する日本人野球選手のサイン。
昔は怪盗キッド、現在は“CROSS-WIZARD”という異名を持つマジシャンである快斗だ。
北斗のマジック・センスが優れていようとも、息子に気付かれずにズボンのポケットにボールを入れるのは造作のない事なのだろう。

「さっき、物忘れが酷い、だの、バカ、だのと言ってたよな。確か高木刑事んトコのお子さんが欲しがってたから今すぐそれ返して貰おうか?」
「い、いやだなあ。尊敬する父さんにオレがそんな事を言うわけないじゃないか。そ、空耳じゃないの・・・け、健介には別の物をあげておくれよ」

この親子マンザイ見ていると、快斗がいるんだな、って、思うんだけど、青子に気付いてないんじゃないのかなあ。
そんな事を考えていたら、快斗が青子へ視線を向けてきた。

「青子、ただいま」
「お帰り、快斗。お仕事ご苦労様。お風呂沸いてるよ」
「そりゃ有り難い。仕事の疲れを取るには我が家の風呂が一番だからな」

何かお父さんみたいな事を言ってお風呂場へ向かおうとした時、青子の耳に何事かを囁いた。

「今宵・・・の光・・・において・・・光石が・・・魔術師・・・に光臨しますよ」
「おとーさん。早くおふろ行こうよ」
「父さん、先に行っとくぜ」

周りで子供たちが騒いでいたから声が聞き取りにくかったけど、いつもの声、そして営業用ボイスとは違う声が青子の耳に響く。
もう一度聞き返そうとしたけど、快斗は北斗と恭子を連れてお風呂場へ行った後だった。


「おかーさん、お誕生日おめでとー」

家族全員揃ったところで、恭子の乾杯の音頭で青子の誕生パーティーが始まった。
誕生パーティー、と、いうより、お誕生日会、と、いう雰囲気に近いんだけど、こういう雰囲気も悪くない。

お母さん。これ、誕生日のプレゼント」

そう言って娘から渡されたのは、画用紙に、おかあさん、だいすき、と、書かれた私の似顔絵。

「恭子、ありがとう。これどうしたの?」
「幼稚園でね、先生から、好きな人を描きなさい、って、言われたから描いたんだ。あとね、お父さん、お兄ちゃん、お祖母ちゃん、銀三お祖父ちゃん、おジイちゃんも書いたから、誕生日にあげるの」

恭子の発言を聞いて何げに家族を見渡すと、快斗、お父さん、寺井さんの顔が笑顔で崩れていた。この3人も工藤くんと蘭ちゃんのお父さんと同じ相当な親(孫)バカだから。
北斗からは綺麗な花束。本人曰く―――これで小遣いヶ月分が吹っ飛んだから、来月から小遣いの値上げを要求する
これって、お小遣い3ヶ月分、のわりに本数が少ないんだけど・・・あ、なるほど。あの子の事を何だかんだと言いながら大事にしてるのよね、北斗は。
意味深な視線を息子に向けると、それに気付いた北斗は何事もなかったかのようにご飯を食べている。もっとも箸が逆さまだったけど。

「だいたい母さんとアイツが誕生日が同じってのがなあ。この件に関してはコウノトリのきまぐれだからしょうがないけどさ」
「北斗。私は何も聞いていないわよ?」
「無様ね」

何も言えなくなった息子に快斗が園子ちゃんちの光(ひかり)ちゃんの声で止めをさす。
快斗の声帯模写って怪盗キッドの時から似ていたけど、年齢を重ねる毎に本人が、目の前で喋っています、って、思えるんだよね。

「父さん、アイツの声でそのセリフは止めてくんないかな?ホントに言いそうで怖いからさ」

そいつは悪かったな、と言って快斗は息子の髪の毛をかき回すと、お父さんと寺井さんとの談笑を再開する。

「青子ちゃん、これは私と中森さんと寺井さんからよ」

お義母さんから渡されたのは温泉旅館一泊二日のペアチケット。

「快斗ぼっちゃまも青子さんも夫婦水入らずでゆっくりと過ごして来て下さい」
「北斗くんと恭子ちゃんは我々三人で見てるから、二人で羽休めして来なさい」
「快斗、どうする?」
「そうだな。三人の好意を有り難く受けようぜ」

快斗に聞くと、そういう答えが返ってきたので、有り難く頂戴する事にした。話によると快斗は今週末までオフなので行くなら週末よね。そんな事を考えていたら、何か言いたげな北斗が私の袖を引っ張る。

「どうしたの?」
「青子。北斗の話は聞かなくていいぞ」
「父さん。子供の話をマトモに聞こうとしない態度を親が見せるから、子供が非行に走ったりするんだぞ」
「お前の事だから、一緒に連れて行け、と、言うのは目に見えているんだよ。違うのか?」

急に息子が黙ったのを見ると図星だったみたい。それでもなお食い下がろうとするのが北斗らしいけど。

「そーいう事を言うと、老後の面倒を見てやんねーからな」
「どこでそーいうセリフを憶えてくるんだよ、お前は?」
「ま、それは置いといて、旅行ってヤツは子供の情操教育にも良いと思うんだけど?」
「どうせ金出すのはオレなんだし・・・恭子を含めて四人で行くか?」
「やった。さすが父さん。話が分かるねえ」

北斗は手放しで喜んでたけど、快斗は冷静な声である事を口にした。

「ただし、お土産は無いぞ」
「えっ?それはちょっと・・・」
「そのかわり、大人しく留守番していれば、温泉まんじゅうや現地の特産品を買ってくるけどな」
「そーいう事なら、夫婦仲良くお過ごし下さい。お土産の件、お忘れなく」

北斗を黙らせるには食べ物関係と魚料理が一番有効なんだよね。その父親も同じなのは言うまでもないけど。
そんな事を思っていたら、快斗が椅子から立ち上がる。よくよく見ると料理は兎も角、アルコール類には一切手をつけていない。
マジシャンとして名声を得ている快斗だけに、今回みたいに海外へ出かける事もある。
大抵半月、長くて一ヶ月という仕事を終わらせて帰宅すると、お父さんと寺井さんと一緒にお酒を飲む確率が高い。
たまに工藤くんたちと飲んでいる事があるけど、大体は我が家の男性陣(北斗除く)が相手をしている。
普段だったら前後不覚になるまで飲んでいる快斗が、今日に限って一滴も飲んでいない。

「快斗、珍しく飲んでないね?」
「アメリカの主要都市を一ヶ月で回ってたから時差ボケが酷くて睡眠不足なんだよ。そーいうワケでもう寝るわ・・・お休み」

そう言って快斗は食堂を出て行ったけど、いままで時差ボケとは無縁の人間が急にそんな事を言い出した事に青子は疑問に思った。
それだけでなく、夕食前に快斗が呟いた言葉が頭の中に鮮明に残っていたので、余計に気になったのは言うまでもない。


「あれって、どういう意味だったのかなあ」

後片付けを終え、お風呂に入って寝室へ向かう間、青子はずっと考え込んでいた。
何かって?夕食前に快斗が言ったセリフの事を考えてたんだけど、全く分からないんだよね。

『今宵・・・の光・・・において・・・光石が・・・魔術師・・・に光臨しますよ』

あれ、ホントに何て言ったのかな?子供たちの声でかき消されたのもあるけど、快斗の声も小さかったし。
そんな事を考えながら寝室へ入った時、青子は慌ててドアを締める羽目になる。
青子の視線の先にいたのは、白で統一されたスーツ、マント、シルクハットそしてモノクルを身につけた怪盗―――怪盗キッドが窓から差し込む月光の中、不敵な笑みを浮かべて佇んでいたから。

「こんばんわ、奥様」

右腕を胸の前に出して御辞儀する古典的な挨拶をするキッドに対して青子が真っ先にしたのは、和葉ちゃん直伝のフルスイング式のモップで目の前にいる怪盗を懲らしめる事。
しかし彼はバックステップでモップを避けたけど、風圧でシルクハットが飛んで床に落下する。

「こんのバ快斗、何やってるのよっ!」
「それはオレのセリフだ!オメーは亭主を殺す気かよっ!!」
怪盗キッドから黒羽快斗に戻ったらしく、小規模ながら口ゲンカを始めてしまった。結婚してから一一年経つんだけど、こういうところは全く変わってない。

「ま、まさか快斗・・・また怪盗キッドを始めたんじゃないでしょうね?」
「んなわけねーだろ。ちょいと気分を出したかったんだよ。青子、夕食前にオレが言ったセリフ、憶えてねーのか?」
「憶えてるよ。もっとも北斗と恭子の声で聞き辛かったし、快斗の声も小さかったから」

しょうがねえなあ、と呟いた快斗は、おさまりの悪い髪の毛をかき回した後で、キッドの口調でこう告げる。

「今宵、月が満ちて、その光降り注ぎし時、時を告げる古き塔において、青と白の光石が、天才を超越する魔術師の御令室に光臨しますよ・・・って、言ったんだよ」

天才を超越する魔術師、と、いうのは、マジシャン黒羽快斗の異名である“CROSS-WIZARD”の事。この場合、天才とは亡くなった盗一小父様―――お義父さんを指す。
御令室って奥さんの事だから、青子だって事は分かったけど、後はどういう意味なんだろう?

「ま、それは説明してやるさ・・・と、言うわけで今から出かけるぞ?」
「出かけるって今から?それに何処に行くのよ?」

質問には答えず、床に落ちていたシルクハットを拾ってかぶり直した快斗が、恭しい口調で答えた。

「月の光を浴びながらの飛行も風情があって良いですよ・・・それでは参りましょうか。我が奥様」

青子をお姫様抱っこの要領で抱え上げて窓を開けると、開け放たれた窓から九月の涼しい風が部屋に流れ込む。

「月が満ちし時、我直ちに飛翔を始めん。今宵天気晴朗にして、風向風速申し分なし」

呟いた瞬間、彼の背中から何かが飛び出す。それがハンググライダーである事が分かった時、青子の身体は快斗と共に宙に浮き上がっていた。

「えっ?!ちょ、ちょっと青子をどこに連れて行くの?」
「こら、暴れんじゃねーよ。落ちたらケガじゃすまねーぞ」

そう言われて下をのぞき込むと、約一〇メートルほど宙に浮いていて、少しずつだけど上昇しつつある。
地上にいた時は心地よかった秋風が少しだけど強くなったのを感じた時、上昇が止まって快斗の身体が前傾姿勢になる。

「んじゃ、空の散歩としゃれ込むとしようか」

口元に笑みを浮かべた快斗がそう言うと、追い風に乗ったハンググライダーがゆっくりと飛翔を始める。
空に浮かんでいるのは大きな満月。快斗は行き先を教えてくれなかったけど、何かそれを目標にして飛行している感じかな。

「ねえ快斗、このまま青子を月に連れて行ってくれるの?」
「FLY ME TO THE MOON・・・私を月に連れて行って、か。そうしたいとこは山々なんだけど、今日は別のところで勘弁してくれ」

暫く飛行していたんだけど、徐々にスピードを落として、ある建物に向かってる事に気付いた・・・あの建物って駅前の時計台だよね。
快斗に視線を向けると、彼も青子の視線に気付いたらしく、その通りだと言わんばかりに頷く。

「そう。オレと青子の出会いの場所だよ」

そう言っているうちにハンググライダーは時計台の最上部にある鐘が設置してある場所へ滑り込むようにして着地する。
ゆっくりと降ろしてもらって回りを見たんだけど、自分が立っているのが時計台と思うと少し感動しちゃった。
快斗の言い分じゃないけど、ホントにこの時計台は私たちの思い出の場所なんだよね。

彼と初めて会った場所であり、
工藤くんとの初対決を見たり(あとで二人から聞いた)、
ファ、ファーストキスの場所だったり(照)、
そしてプロポーズの現場だったり・・・するんだ。

「どうだ。気に入ってもらったかな?」
「うん。すごく気に入ったよ。素敵な誕生日プレゼントをありがとう」
「青子、何言ってんだ?まだ終わりじゃねーぞ」

『今宵、月が満ちて、その光降り注ぎし時、時を告げる古き塔において、青と白の光石が、天才を超越する魔術師の御令室に光臨しますよ』

快斗の言葉を反芻して見たんだけど、満月の光、星の光、そして時計台は分かった。
でも、青と白の光石、って、星の海、と、思ったんだけど違うんだ。

『じゃあ、青と白の光石、って、何なのかな?』

そう思っていたら、青子の目に白手袋をつけた彼の右手が映る。

「よく見てろよ・・・その前に青子、これをチェックしてくれ」

何事かと思いきや、快斗は懐中から一枚の青いハンカチを取り出して青子に渡す。
見るからに普通のハンカチで、破れがないかチェックしたり、引っ張ってみたりしたけど何ともない。
ハンカチを快斗に返すと、それを右手にかぶせてから、もう一回確認させるという念の入れようだ。
次に左手でポケットからガラス玉を取り出して、ハンカチの上に落としたと思ったら、ガラス玉が吸い込まれるように消えた。

「!?」

目の前で起きた事に驚いてると、快斗が指先でハンカチを指し示している。取ってくれ、という事らしい。
ま、まさかハンカチ取ったら煙が吹き出してお婆さんになったり、ハトが飛び出してきて青子に襲いかかったりしないよね?
恐る恐るハンカチを取ると、青い宝石と先程のガラス玉を組み合わせたネックレスが白手袋の上に乗っていた。

「これが、青と白の光石、の正体さ・・・青子、誕生日おめでとう」

よく見るとそれは、ひし形にカットしたサファイヤの中心に月長石を埋め込んだネックレス。
サファイヤは青子の誕生石、そして月長石こと、ムーンストーン、は快斗の誕生石である。
「それは“SEA OF THE MOON(月の海)”という名前を持っている・・・ネックレスの宝石部分には面白い仕掛けがしてある故に、そう名付けられたんだ」

そう言って快斗がネックレスの宝石部分を月にかざすと、反射した光が時計台の鐘に何かを映しだした。
サファイヤが放つ青い光の中に月長石の白い光がおぼろげに映る光景はまるで海面に映る月。快斗が宝石部分を動かす度に青と白の光が揺れ、波間に漂っている月を眺めているように感じる。

「凄くきれいだね・・・ありがとう快斗。でも家で渡しても良かったんじゃない?」
「冗談じゃねーよ。家で渡そうものなら北斗あたりがうるせーからな」

それは十分にありうる。あの子の事だから余計な事を言って、快斗にゲンコツをもらう可能性が大きいんだよね。誰に似たかは言わないけど。

「もう一つ理由があってさ・・・コイツはオレたち二人をずっと見てきたんだ。こういうイベントは見せなきゃいけない、と思ったんだよ」

快斗の言うとおり、この時計台は私たちの全てを見ているという感じがする。
今でも二人だけのデートとか、家族揃って遊びに行く場所として定番と化しているから、北斗も恭子も時計台が大のお気に入り。
以前、子供たちからそう聞いた時は、やっぱり親子なんだな、って、快斗と二人で笑った事あったっけ。

「私たちもだけど、子供たちの思い出の場所にもなるのかな?」
「それは子供たち次第だな・・・ほれ、終わったぞ」

首と胸元に金属特有の冷たさが伝わる。いつの間にか快斗がネックレスを装着してくれていた。
宝石部分を手に取ってみると、青子の手に収まるほどの大きさで、予想していた以上に重く感じる。

「近くで見るとホントにキレイだよね」
「そう言って貰うと、頼んで作ってもらった甲斐かあるってもんだ」

快斗の声を聞いた瞬間、身体が宙に浮いた感覚を憶えたので回りを見ると、時計台に来た時のようにお姫様抱っこをされていた。
今まで柔らかだった秋風が急に強さを増していくのを感じた時、快斗が青子の方へ顔を向ける。
「風向風速が変わったようだ。このままだったら行きより早く家に帰れるけど、少しばかり遠回りしていくか?」

「また、どこかの屋上にでも行くの?」

そう聞くと、快斗は首を左右に振った。

「今夜は月見するには絶好の満月だ・・・地上の月見より、空中から夜風と月光を全身に浴びての月見はどうかと思ってな?」
「それ面白そうだね・・・それじゃあ、出発ーっ」

青子の声に満足そうに頷いた快斗は、月の光が降り注ぐ夜空へ向かって飛翔を始めた。



終わり
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テーマ : まじっく快斗 - ジャンル : アニメ・コミック

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