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プロフィール

槇野知宏

Author:槇野知宏
宮崎県児湯郡生まれ。
宮崎県児湯郡在住。

「名探偵コナン」
「まじっく快斗」
「BLACK LAGOON」
「艦隊これくしょん」
「ファイアーエムブレム」シリーズ
「ペルソナ」シリーズ
(特に3と4)
「マクロスF」
「パワプロ」シリーズ
「田中芳樹」
「池波正太郎」
「司馬遼太郎」
「有川浩」
「TUBE」
「山本正之」
「NO-PLAN」
「クラシック」
「プロレス」
「中日ドラゴンズ」
を偏愛する会社員
その実態は、単なるオタク。

年を取る毎に深みにハマってますが、これも人生、問題ない、と開き直ってます(笑)

PASSの掛かっている日記(小説)につきましては「PASSについて」をご覧下さいませ。

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2012/02/23 (Thu) 08:20
銀河探偵伝説(1)

 宇宙暦七九六(帝国歴四八七)年の初頭。
ゴールデンバウム朝銀河帝国と自由惑星同盟は開戦以来、三百数度目の戦端を開こうとしていた。
一五〇年で三百回―――後世から見ればバカらしい数字であるが、当事者たちにとっては至極マジメな問題なのだ。
三百回のうち参加艦艇が万を越える規模の会戦は一割程度で、残りは小規模艦艇同士の小競り合いである。
今回、帝国軍は艦艇二万隻をもって同盟領へ侵攻してきたのだが、これは昨年末に帝国軍が誇るイゼルローン要塞へ同盟軍が侵攻した事に対する報復である。
対する同盟軍は三個艦隊四万隻の艦隊をもって同盟領外縁にあたるアスターテ星域で迎撃をする事になった。

 帝国軍を率いるのはローエングラム伯ラインハルト。氷のような美貌と不敵な表情を持つ若者である。
彼は元の姓をミューゼルといい、貴族とは名ばかりの貧しい家庭に生まれた。帝国暦四六七年(宇宙暦七七六年)の事である。
彼の運命が変わったのは五歳年長の姉アンネローゼが、時の皇帝フリードリヒ四世の後宮に納められてからである。
姉と同じ黄金色の髪と蒼氷色(アイスブルー)の瞳を持つ若者は、姉アンネローゼに対する皇帝の寵愛と彼自身の才幹によって加速度的に栄進していった。
二〇歳の時に彼はローエングラム伯の爵位を授かり、帝国軍上級大将に任ぜられていた。専制国家らしい極端な人事ではあるが、地位には責任が伴う。
これが皇帝の一族であったり、代々続く名門の貴族であればその必要はなかったであろうが、彼は単に“皇帝の寵姫の弟”でしかないため、自己の才幹を他者に示さなければならなかった。
この戦闘でラインハルトは「自由惑星同盟」を僭称する叛乱軍を打ち破り、自らの地位を確立するためでもあった。

 一方、自由惑星同盟も一人の用兵家を得た。宇宙暦七七二年に生を受け、二〇歳で軍籍に入った工藤新一である。
父で小説家の優作、母で元女優の有希子の一人息子として生まれた新一は、幼い頃から優作が所有する膨大な書籍を読み漁ったり、父の知り合いである軍人の体験談を聞くのが好きな少年であった。
帝国もだが同盟政府も徴兵制度を執っていたが、彼は、どうせ二〇歳になったら徴兵される。それなら士官学校に入学した方がマシだ、と、いう理由で同盟軍士官学校に入校した。
この時、新一は後に彼が率いる艦隊の主要幕僚たちと知り合うことになるのだが、当時はそれを知るものはいなかった。ただ後世には“七九二年ファミリー”として伝わっている。
 士官学校を首席で卒業して、一年後に中尉に昇進した新一は、エル・ファシルの戦いにおいて、昇進速度のアクセルを思いっきり踏み込む事となった。
帝国領に近いエル・ファシル星域の駐留部隊の幕僚としてに配属された新一は事あるごとに上層部と対立した。彼が士官学校首席卒という点もあったろうが、それ以上に正論で上司や先輩たちを悉く論破しまくっていたからである。
そして宇宙暦七九三年、一,〇〇〇隻のエル・ファシル駐留部隊は同数の帝国軍との戦闘で敗北した。これは互いに同程度の損害を与えて両軍とも帰投したのだが、帝国軍は帰投すると見せかけてから急速反転し、同盟軍の背後から襲い掛かったのである。
この時、新一は帰投する帝国軍の後背を襲う事、更には帰投するにしても敵に背を向けずに後退する事を強く進言したが黙殺された。その結果、同盟軍は敗北し、司令部をはじめとする艦艇二〇〇隻はエル・ファシル本星へと逃げ込んだ。
帝国軍は兵力を増強し、一挙にエル・ファシル星域を“叛乱勢力からの解放”しようと図った。エル・ファシルの民間人三〇〇万人は状況の切迫に戦慄し、彼らの代表者が軍部に対して民間人全員の脱出計画と遂行を求めた。
その彼らの前に現れたのが工藤新一中尉であった。まだ若いし、階級も低い。そのため民間人の間から、軍部は真剣に脱出計画に取り組む気があるのか、と、いう声も上がったが、新一は完璧に脱出準備を整え、それまで新一に隔意を持っていた民間人を感歎させた。
 ところがエル・ファシル駐留部隊司令官アーサー・リンチ少将は日頃から目の上のたんこぶ―――階級を問わずに正論を述べる傲岸不遜な若造―――である新一と、脱出計画に携わっている将兵、そして守るべき民間人を置き去りにし、直属の部下と共に逃亡したのだ。
司令官の行動に対し、怒りを通り越して呆れ果てた新一であったが彼はこれを最大限に利用した。何と司令官を囮として帝国軍を引き付けさせ、その隙に新一が率いる船団はエル・ファシル星系を離脱して、三〇〇万人の民間人を後方星域に到着させたのである。
そんな彼を待っていたのは賞賛と歓呼の嵐であった。同年の七月一日付で大尉に昇進した新一は同じ日の午後には少佐へ昇進した。生者に二階級特進は認められないという軍規が、この奇妙な処置を上層部に執らせたのである。その後、新一は戦闘になると必ず戦功をたて、それに伴って昇進し、現在の階級は准将である。

 二万隻の帝国軍に対し、三個艦隊で三方向から包囲して殲滅する。これが同盟軍の基本戦略であったが、その目論見はラインハルトの手によって根底から覆される羽目になる。
その帝国軍艦隊を迎え撃つ同盟軍幕僚の中に工藤新一准将の名がある。この年、ラインハルトは二〇歳、新一は二四歳であった。  自由惑星同盟軍第二艦隊旗艦「パトロクロス」
その艦橋に立つ艦隊司令官目暮十三中将の前に工藤新一准将が立っている。目暮は目の前の若者が副参謀長という要職に就いているだけでなく、自分より階級が二つしか違わないのが未だに信じられない。
考えてみれば自分の子供と変わらない年齢であるから、信じられないのは当然であろう。その若い副参謀長は、上官に対して非の打ち所がない敬礼を行って申告する。

「工藤准将、参りました」

厳めしい顔に鼻髭をたくわえ、横幅が広くがっしりとした身体を持ち、軍人か警察官という職業しか想像出来ないような目暮は答礼して口を開いた。

「准将、君が提出した作戦案を読ませてもらった。興味深い案だが少し消極過ぎではないかね?」

上司の言葉には揶揄する響きが込められていたが、新一は平然と聞き流している。

「私は味方が負けないための作戦を閣下に上申しただけです」
「確かに君が記しているとおり負けない作戦ではある。敵の二倍の兵力で三方から押し寄せる必勝の策に何の不満があるというのだ?」
「しかし包囲網はまだ完成されておりません」

その言葉に司令官の眉が僅かに動くが、若い参謀は全く気にする素振りすら見せない。
目暮は新一の経歴を知っている。四年前に士官学校を首席で卒業後、大中小規模の戦闘を経験して二四歳にして准将という同盟軍内でも一〇人もいない二〇代の将官の一人。そして何より、エル・ファシル星域において民間人三〇〇万人を救った英雄、と、いう事実。
ただ為人(ひととなり)に関しては“若いくせに生意気”“自信家で傲岸不遜”これが軍部の大部分に蔓延る新一の評価である。その一方で部隊指揮官や艦隊参謀としての手腕は高く、一部の軍人には高く評価され、同僚や部下からも絶大に信頼されているのも事実である。
中将自身、新一が配属されるまでは彼に対する評価は低かったのだが、実際に職務態度を見ていると自分の信じていた噂は間違っていたと確信していた。新一が第二艦隊に配属されて以来“彼の献策に従っていれば良かった”と思う時が多々あるからである。
その一方で、百戦錬磨の提督、と、称されている自負があるが故、新一が立案する作戦を、若輩者の戯言、と、して採用しない自分がいる事実である。今回も、百戦錬磨の提督、と、いうプライドが副参謀長の作戦案を却下させた。
それから一時間後、偵察艇から送信された一本の緊急報告電が第二艦隊旗艦内にどよめきを走らせた―――帝国軍ハ予想宙域ニアラズ、急速前進シテ第四艦隊ト交戦状態ニ突入セントス。

「何だと!そんな馬鹿な・・・」

 目暮の声が響くと同時に、司令部要員や「パトロクロス」乗員が一斉にざわめき出す。
司令部の予想では包囲下におかれた敵は戦線を縮小して密集隊形をとるはずだった。そこへ三個艦隊が同じスピードで殺到し、火力の網をもって敵の数と抵抗力を削ぎ取っていく。
かつて同盟軍が帝国軍を完膚無きまでに粉砕したダゴン星域会戦と同様の陣形であったが、帝国軍は同盟軍の思い通りにはならなかった。
艦橋内を支配しているざわめきの中で一人冷静だったのが新一だった。彼は帝国軍の動きを見て誰にも聞こえないような声で呟く。

「やはり各個撃破で来たか・・・ま、オレが帝国軍の指揮官でも同じ手を使うだろうな」

そして椅子に座り直すと、黙って自分の机にある戦術コンピュータのキーボードを流れるようなスピードで叩くのだった。



 第二艦隊司令部が帝国軍の意外な行動に面食らっている頃、第四艦隊の前衛部隊に所属する第三三混成戦隊が高速接近する帝国軍艦隊を探知した。

「敵ですって!?」

同盟軍内に二人しかいない女性将官で唯一の前線部隊指揮官である佐藤美和子准将は偵察担当士官の報告に思わず聞き返した。
まだ二八歳ながら艦隊運用の手腕は既に達人級と言われ、そして戦闘時における攻勢の苛烈さを軍内では高く評価されている。

「偵察艦の報告によると帝国軍が我が艦隊に接近中との事です。艦艇数は二万」
「帝国軍のほぼ全軍ね・・・会敵予想時間まではどのくらいかしら?」

あと一〇分、との声に頷いた美和子は直ちに麾下の艦艇に総力戦を命じるとともに、近くにいる二歳下の後輩を通信で呼び出す。
やがて通信スクリーンに第三四混成戦隊司令、高木渉准将の顔が現れる。彼女自身が、背中を安心して任せられる唯一の存在、と、言わしめるほどの人物だ。
一見すると冴えない風貌をしているが、粘り強く戦線を維持する防御戦を得意とし、艦隊運用能力も名人級と言われている。

「高木くん、偵察艦から報告は聞いているわね?」
『はい。こちらも総力戦用意を命じたところです』
「艦隊司令部に・・・」

連絡はどうしたのか、と聞こうとした時、スクリーンに映っている渉の顔が急激に乱れた。
美和子は瞬時に敵が妨害電波を発生させている事を悟った。艦橋にある通信担当スペースに目を向けると通信員たちが必死で機器と格闘している。
敵妨害電波のため通信不能、との声に彼女は即座に第二、第六の各艦隊に駆逐艦を走らせて連絡を出すように指示を出した。貴重な戦力を割くのは忍びないが普通の連絡艇では時間がかかり過ぎるため、速度がある駆逐艦を使用すれば時間短縮にもなる。
戦闘とは時間との勝負でもある―――後方勤務より前線での勤務が多い美和子はその事を痛いほど分かっていた。一連の作業に対する指示を終えた彼女は艦橋のメインスクリーンを見つめて呟いた。

「そろそろ敵が来るわね。高木くん、生きて還るのよ」

帝国軍の妨害で通信不能になった瞬間、渉は即座に麾下部隊に艦載機の緊急発進を命じた。艦載機の全機発進完了、と、報告する参謀の声に頷いた渉の耳に飛び込んできたのは測的担当オペレーターの絶叫だった。

「帝国軍、イエローゾーン突破!レッドゾーンに侵入しつつあり」
「全艦砲撃戦用意」

そう命じると同時に右手を肩の位置まで上げ、乾ききった自分の唇を舐める―――先刻スクリーン越しに会話した先輩の顔が浮かぶ。

「佐藤さん、必ず生還して下さい」
「帝国軍前衛部隊、高速で接近中・・・完全射程距離に入りました!」

渉の呟きとオペレーターの報告が重なった瞬間、彼の右手が空気を切り裂くように振り下ろされ、口から砲撃命令が声となって飛び出す。

「撃て(ファイヤー)!」

ほぼ同時期、美和子も渉と同じ命令を下していた。それがアスターテ星域における同盟軍と帝国軍の最初の砲火であった。



「帝国軍急速接近。現在、前衛部隊の一部と交戦中」

その報告を聞いた第四艦隊司令官パストーレ中将は怒りと衝撃が混ざったような顔を浮かべている。怒りは自分の命令を受けずに戦端を開いた前衛部隊、そして衝撃は予想に反した行動を行った帝国軍に向けられていた。

「前衛部隊も敵も何を考えている?」

戦端が開かれているのに、これほど愚劣な質問はないであろう。先頭集団は自分たちを守るために攻撃を開始したのであり、帝国軍は同盟軍に包囲される前に各個撃破戦法を取っただけの話だ。

「司令官、どうなさいます?」
「どうなさいますとは何事だ!今回の包囲作戦に関して貴官たちは反対しなかったではないか?今更何を言っている!!」

幕僚に八つ当たりに近い感情をぶつけながらもパストーレは第二、第六艦隊に救援を要請するが、通信員は、敵妨害電波により送受信不能、と、絶望的な声を上げた。
第四艦隊旗艦「レオニダス」の艦橋内が右往左往している間に、メインスクリーンが青白く染まった。これは敵艦から放たれたビームがエネルギー中和磁場に反射したという証拠であり、それと同じ顔色になりながら司令官は最低限の命令を下す。

「全艦総力戦用意」

既に周囲の艦が攻撃を受けている状況の中、その命令はあまりにも遅過ぎる命令であった。





 帝国軍艦隊総旗艦「ブリュンヒルト」艦橋。
パストーレの声が聞こえたわけではなかったが、ラインハルトは冷笑しながら呟く。

「無能者め。反応が遅い」

そう言いつつ戦況を見るが、第四艦隊の一部隊の奮闘を目にして感嘆せずにはいられない。
特に第四艦隊前衛部隊の一〇〇〇隻程度の二個艦艇群――――美和子と渉が指揮する部隊―――が、互いをカバーしながら帝国軍の突撃を阻もうとしている光景がメインスクリーンに映る。

「ほう。一〇〇〇隻の艦艇で我が軍の突撃を阻むとは・・・敵ながら賞賛に値するな」
「しかしラインハルト様。第四艦隊の攻略に時間をかけると他の艦隊に後背を衝かれる恐れがあります」

腹心であるジークフリード・キルヒアイス大佐の具申に、金髪の司令官は頷きながら答えた。

「キルヒアイスの言う事は理解している。メルカッツとファーレンハイトの艦隊をもって攻撃を加えたのち、タイミングを見て全面攻勢をかける」

ウィリバルト・フォン・メルカッツ大将、そしてアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将。
前者は帝国、同盟両軍にその名を轟かせる宿将で、小型艦艇や艦載機を使用した機動接近戦を得意とし、後者は機動性に富んだダイナミックな速攻を得意としている。
主将の命令を受けた両提督が麾下の艦隊を率いて第四艦隊に攻撃を開始したのは八時二七分である。




「司令部は一体何やってるのよ!」

 麾下部隊の指揮を執り続けながら美和子は、帝国軍の攻撃に反応の鈍さを披露している艦隊司令部に対して小さな声で罵声を浴びせた。
もし第六艦隊に配属されている教え子が彼女と同じ立場であったら、あらん限りの罵声を司令部に向けて吐き続けたであろう。
現段階で第四艦隊前衛部隊は三〇〇〇隻中、帝国軍と砲火を交えているのは半数にも満たない。残りはというと急速接近してきた帝国軍に対して何の対応も出来ておらず、やっと砲門を開いた艦艇がいる始末だ。
ようやく司令部から総力戦用意の命令が届いた時には、前衛部隊は帝国軍によって徐々に食い潰されようとしている。

「既に敵はこちらを呑み込もうとしているのに対応が遅過ぎるわね」

そう呟いた彼女は、自分と同じ立場であろう後輩を通信で呼び出す。
帝国軍の通信妨害のため画面や音声に乱れがあるものの、全然聞こえないより遙かにマシというレヴェルだが。

「高木くん、そちらの状況はどう?」
『敵の前進速度を鈍らせようとしてますが、反撃する部隊が少な過ぎますね』

司令部だけでなく他の部隊も完全に浮き足立ってる証拠ですよ、と、渉は状況を分析した。第四艦隊で実質上戦端を開いているのは、美和子と渉の部隊だけと言っても過言ではない。
善戦から苦戦そして壊乱へと移行する状況を二人で懸命に抑えている。並の人間であればとっくに押し潰されるところであるが、任官以来相応の場数を踏んで来ているからこそ踏み止まっていられるのだ。

「帝国軍約七〇〇〇、突っ込んで来ます!!」

互いのオペレーターが悲鳴に近い絶叫を上げて報告したのは八時二七分。それを聞くや否や二人はに同時に迎撃を指示した。

「これ以上、敵の侵入を許すな!砲火を集中させて敵の前進を何としても阻止するんだ!!」
「ここを突破されたら後がないのよ!ビームもミサイルも撃って撃って撃ちまくれえっ!!」

一つに集約されたビームやミサイルの束が帝国軍艦隊に対して光と熱の弾幕を張るが、敵のそれは倍以上の火力で二人の部隊に殺到する。
閃光と火球、そしてエネルギーの暴風が周辺宙域を駆け抜けた後に残っていたものは、僅かな綻びしか見せていない帝国軍と陣容が薄くなって艦列の各所に穴の開いた同盟軍であった。
二人の麾下艦艇は合わせて約一、一〇〇隻だが、戦闘開始から帝国軍との激烈な戦闘を続けた結果、既に半数以上が失われていた。

『佐藤さん。数に劣る我々だけでは、これ以上の戦線維持は不可能です』
「高木くんの言う通りね。第三三、三四混成戦隊は急速後退して部隊を再編成する」

部隊再編のために後退した第三三、三四混成戦隊がいたスペースは本来であれば味方が埋めるべきであるが、逆に帝国軍がそのスペースを埋め、第四艦隊前衛部隊に対して容赦ない攻撃を浴びせ続ける。
パストーレの命令を受けてようやく応戦態勢に入ろうとしている第四艦隊は機動性に富んだ帝国軍の動きに翻弄され爆沈する艦が続出した。
帝国軍からワルキューレと呼ばれる単座式戦闘機、レールガン二四門という重武装の雷撃艇が母艦から順次発艦し、同盟軍艦艇に向けて殺到していく。
ある艦はワルキューレのビーム砲で機関部を切り裂かれ、別の艦に至っては多方向から押し寄せる敵艦載機に対処しているうちに死角から接近した雷撃艇の猛射を受けて撃沈する始末だ。
艦載機や小型艦艇による近接戦闘となると、小型艦艇の攻撃が有効で大型の戦艦や巡航艦では小型のレーザー砲による弾幕の展開しか防御手段がない。

「こちらも艦載機を緊急発進。艦隊の防空に専念させろ」

 第四艦隊からも母艦機能を有する艦艇からスパルタニアンと呼ばれる艦載機が発進準備をはじめるが、発進させる瞬間というのは艦が無防備になり易い。
たちまちワルキューレや雷撃艇に懐へ入られて攻撃を受けると、艦載機が誘爆を起こして艦体の破片と乗員を虚空に撒き散らして撃沈―――第四艦隊の各所で同じような光景が繰り広げられる。
戦闘開始から一時間半、帝国軍のメルカッツ、ファーレンハイト両提督の猛攻を受けた第四艦隊前衛部隊は壊滅に近い状態だった。
三〇〇〇隻の中でまともに戦闘をしているのは三割に満たない。残りの艦艇は主砲やミサイルを一発も撃たずに、そして満足な反撃も出来ないまま撃沈するだけであった。
艦体を真っ二つにされた艦、鉄屑同然の状態の艦、機関部をやられて宇宙空間を漂うだけの艦、そして軽微な損害にも係わらず乗員が全員戦死した艦―――既に戦線崩壊と言っても過言ではない。
なおも抵抗を続ける艦艇があるのだが既に無力な存在になりつつあった。この期を逃さずラインハルトは全面攻勢に打って出た。敵の前衛部隊を粉砕した帝国軍は第四艦隊本隊に怒濤のごとく殺到する。
宇宙母艦「ヨークタウン」は激しい防御砲火をかいくぐってきた雷撃艇にレールガンを叩き込まれ、艦体が真っ二つにされて爆沈。
同型艦の「ホーネット」に至っては爆発に巻き込まれないよう回避している途中、戦艦「アリゾナ」と衝突して互いに動きがとれないところへ攻撃を受けて両艦とも爆散した。

「な、何をやっているのだ」
「何をやっていやがる」

同じ光景を旗艦から目にしたパストーレとファーレンハイトは似たような呟きを漏らす。ただ違うのは前者は絶望と焦り、後者は余裕に満ちた嘲笑の響きが込められていた点にある。そして戦況も第四艦隊が不利なまま続いていった。



 この時、第二、第六艦隊は妨害電波の隙間から断片的に流れてくる情報、そして美和子から派遣された駆逐艦の連絡によって事態の急展開を知らされていた。
第四艦隊が帝国軍と接触する前に作戦の変更をしていれば、今後の展開も多少は違っていたかも知れない。だが当初の作戦計画を変更するという決心がつかないまま戦場へ向かっている。
「パトロクロス」艦橋にある指揮官席に座っている目暮中将は一時の混乱から立ち直りつつ、今後の事について考えていた。第四艦隊の艦艇数は一万二〇〇〇隻、それに対して帝国軍は二万。第四艦隊の不利は明白であった。持ち堪える事を期待して救援すべきか、それとも第六艦隊との合流を急ぐべきなのか。
ふと周りの幕僚を見渡すが、どの顔も沈んだ顔をしている。今回の作戦に自信を持っていただけに帝国軍の想定外の行動は彼らの自信さえ粉砕してしまっている。そんな中、一人だけ落ち着いている者―――敵の各個撃破戦法を予測していた副参謀長に司令官は声をかけた。

「工藤准将」
「はい」
「君の予想通りになってしまった。今後の展開について意見を聞きたい」

新一は短時間で作り上げた戦闘推移図をメインスクリーンに展開させてから自分の席から立ち上がった。

「帝国軍が我が軍の包囲陣を逆手に取った各個撃破戦法に出てきたのは事実であり、このまま当初の作戦に固執すれば敵の各個撃破戦法の餌食となるだけです」

そう言って端末を片手で動かすと、メインスクリーンに映っている赤い三角形が正面の緑の三角形を消滅させ、時計回りで右の三角形の後背を衝いて消滅、そして残った左の三角形と相対する。
正面の緑の三角形が第四艦隊、そして右の三角形が第六艦隊、左は言わずと知れた自分たちが所属している艦隊である事は誰の目から見ても明らかだった。

「我が軍は敵の二倍の兵力を有していますが、一つの戦場に四万隻が集結しているわけではありません。一個艦隊が単独行動をしてるのに等しく、そして艦艇数は敵のそれを下回ります」
「だが第四艦隊のパストーレ中将は経験も豊富な指揮官だ。たとえ二万隻の艦隊が攻めてきたとしても、持ち堪える事が出来るのではないかね?」

恐らく無理でしょう、と、新一は司令官の希望的観測をバッサリと切り捨てた。

『敵より多くの兵力を準備し、敵の虚を衝いて攻勢をかける』
『敵だけでなく、味方の実情を知り尽くして戦いに臨む』

これは人類が地球に生息していた太古の昔から伝わる戦略戦術理論であり、士官学校の教本にもしっかりと記されている事だ。
断片的に流れてくる情報や第四艦隊から直接来た駆逐艦の情報を総合すると、第四艦隊は完全に隙を衝かれた格好で戦端を開いている。恐らく、多数の敵に包囲された敵は戦線を縮小して密集隊形を執る、と、いう固定観念に囚われていたのだろう。
実際、新一以外の第二艦隊司令部はその固定観念に囚われ、帝国軍の想定外と思われる行動で混乱したのだ。戦端を開くまでにある程度の余裕のある艦隊がこのザマだ。
戦端を開く直前の艦隊司令部がそのような混乱状態に陥れば、麾下の艦隊にそれが及んで混乱に拍車がかかるのは当然であろう。ことに歴戦、百戦錬磨と称される提督ほど、自分の経験や実績に自信を持っているため柔軟な発想についていけず、そのような傾向に陥りやすい。

「・・・確かに君の言うとおりだ。ではどうすれば良いと思う?」
「速やかに第六艦隊と合流し、その宙域を戦場に設定します。そうすれば我が軍は二万八〇〇〇隻となり、敵と五分以上の戦いが出来ます」
「分かった。直ちに第六艦隊に駆逐艦を分派して、合流する旨を伝えさせよう」
「もう一つお願いがあるのですが、駆逐艦を割いて四方の警戒、情報の収集に当たらせますが宜しいでしょうか?」
「うむ、その件は君に任せる」

この時、漸く新一の献策に正しさを見い出した目暮の決断は早かった。新しい合流宙域の設定、そして第六艦隊へ派出する駆逐艦の選定など―――たちまち第二艦隊司令部に活気が戻り慌ただしさを増していく。
その慌ただしさの中、新一は自ら通信用機器を操作してある人物を呼び出した。

『これはこれは工藤副参謀長閣下。当隊にどのようなご用件でしょう?』

右腕を胸の前に出して御辞儀する古典的な挨拶、そして気障ったらしい物の言い方をする男が通信用スクリーンに現れた。スクリーンに映った顔は新一と瓜二つ・・・しかし、よく見れば目つきや口元、髪型が微妙に違う事が分かる。
第二艦隊所属第一四一二駆逐艦戦隊司令、黒羽快斗准将。新一とは士官学校の同期生であり、同盟軍にいる二〇代将官のうちの一人で、高速艦艇の機動力を駆使した奇襲、補給線遮断といったゲリラ戦などを得意とし“奇術師(マジシャン)”という異名を持っている。

「相変わらずだな、黒羽。さっそくで悪いが司令部からの命令を伝える」
『了解。艦隊周辺にウチの艦艇を配置して偵察と情報収集をやれ、って、事ね』
「良く分かってるじゃねーか。それともう一つある」

新一が快斗に告げた事は、第四艦隊の残存兵力を早くかつ安全に第二艦隊に合流させて欲しい、と、いう事だった。
電波状態が万全でない以上、艦隊同士の連絡は艦艇同士を行き来させなければならない。普通は巡航艦や駆逐艦を使用するが、快斗麾下の駆逐艦戦隊は高速航行可能な最新鋭の駆逐艦だけで編成されている。
その速度は通常の艦隊が一日で航行してしまう距離を半日で踏破してしまうほどだ。元々駆逐艦という艦種は敵艦に肉薄して攻撃するだけでなく、偵察、情報収集、連絡などの用途には使い勝手の良い艦艇なのだ。

『工藤は第四艦隊が残ってる・・・そりゃ、そーだよな』
「あの艦隊には“鬼の佐藤、仏の高木”がいるんだ。あの二人が簡単に戦死するワケねーだろ?」
『確かにな・・・で、第六艦隊の方はどうすんだよ?』
「あっちは他の部隊から駆逐艦を分派させて連絡に行かせる。ただ連絡が行き着く前に艦隊が壊滅してたら話になんねーな」

第六艦隊司令官の性格を人づてではあるが知っている新一は、彼が帝国軍の柔軟な用兵について行けないだろうと踏んでいる。目暮には“艦艇二万八〇〇〇隻”と、言ったが、帝国軍と対峙できる兵力は約二万三~五〇〇〇隻程度と考えていた。

『じゃ、平ちゃんは?』
「服部が、そう簡単にくたばるような人間と思うか?」
『そりゃ確かにね。平ちゃんの悪運の強さは折り紙付きだからな』
「それはオメーもだろうが・・・話はそれだけだ。さっき言った事、忘れるんじゃねーぞ?」
『そっちの話は分かった。おい、工藤。人に超過勤務させるんだからハイネセンに帰ったら何か奢れよ?』

そう言って快斗は通信を切った。口調は軽いがこちらが意図している事以上の事を難無くこなしてしまう快斗の艦隊指揮能力を新一は高く評価している。
通信の切れたスクリーンから戦術コンピュータのモニターに視線を転じて、新一は素早い手つきで端末を操作していった。



 第二艦隊司令部が当初の作戦計画の練り直しに躍起になっている頃、第四艦隊は艦隊と呼べるほどの戦力を有していなかった。
帝国軍と戦端を開いてから既に四時間が経過していたが、戦線の至るところが寸断され、大部分の艦艇は艦隊司令部との連絡が不能のまま、各艦単位で絶望的な抵抗を続けている。
第四艦隊本隊は帝国軍によって蹂躙され、その最中に司令官パストーレ中将は旗艦「レオニダス」が被弾した際、宇宙空間へ吸い出されて消息不明となっていた。
宇宙服を着用せず、生身のまま暗黒の世界へ放り出されたワケだから生存は絶望的であり、司令官を始めとする上級士官が戦死または行方不明である事を美和子が渉から聞かされたのは戦闘が終結に向かっている時であった。

『司令官、副司令官、そして各級指揮官の大部分が戦死ないし行方不明状態です。まだ戦闘が続いている状況なので何とも言えませんが』
「と、言う事は現時点で第四艦隊の先任指揮官は私か・・・」

会戦当初、五五一隻だった美和子麾下の艦艇も現在は二六三隻。渉のそれも五三三隻中、二七九隻しか残っていない。
二人は四時間も激戦の渦中にいたのだが、半数を失ったといえ良くこれだけの艦艇が残ったものだと感心している。
もし帝国軍が掃討戦に移行しようものなら美和子と渉だけでなく第四艦隊は完全消滅していただろうが、帝国軍は艦列を整えると第四艦隊から高速で離れて行った。

「普通だったら掃討戦に移るはずなのに・・・どういう事かしら?」
『恐らく他の艦隊へ向かったんだと思います』
「我が軍は四万隻と言っても、一個艦隊の艦艇数は帝国軍より少ないから各個撃破に出たワケね」

敵の行動を理解したものの、美和子や渉に出来る事と言えば散り散りになった第四艦隊の残存艦艇を収拾、そして再編成をする事である。二人が戦場を駆け回った結果、残存艦数は一四八五隻を数えた。
さすがに残存艦艇をもって帝国軍の後背ないし側面を直撃しようという無謀な考えはせず、情報収集のために部隊を集結させて警戒を強化するしかなかった。



 一方、第六艦隊は美和子の連絡を受け取ったあと、艦隊司令官ムーア中将は各級指揮官を旗艦「ペルガモン」に招集して今後の対策を協議する場を設けた。ただし、対策を協議する、というより、司令官の独演会、と、化していた。

「敵は我々の向かう先に必ずいる。このまま直進すれば敵を食い止めている第四艦隊、我々と同様の行動をしている第二艦隊と三方向から挟撃できるぞ」

司令官はそう熱弁したものだが、大部分の指揮官は司令官に同調した―――というか、司令官の圧力に負けただけである。そんな熱弁に水を差すような声が指揮官群の片隅から聞こえた。

「第四艦隊は既に負けた、と、思た方がええんちゃいまっか?」
「誰だ!」

司令官の顔と気分を不快にさせた人物に対して鋭い眼光を向けると、その人物は悪びれた様子もなく立ち上がる。艦隊識別帽(スコードロンハット)の庇を後ろにし、色黒で細身ながらがっしりとした体型、そしてムーアの眼光に負けないほどのそれを持っている青年で、襟の階級章を見ると准将である事が分かった。

「貴官は確か第八一〇駆逐艦戦隊司令の服部准将だったな」

第六艦隊所属第八一○駆逐艦戦隊司令、服部平次准将。高速艦艇の機動力を利用した速攻主体の用兵に関しては定評があり、同じ駆逐艦乗りの快斗とは双璧と謳われている。
二人の相違点と言えば、ゲリラ的な奇襲を得意とする快斗。逆に正面切っての突撃、強襲を得意とする平次。違いはあっても二人が有能な指揮官である事は間違いないが、二四歳という若さで准将という階級を得ているため、新一と快斗同様に一部の軍上層部からの受けは宜しくない。

「ほう、その根拠を聞いてみたいものだ」
「帝国軍の総数は二万、第四艦隊は一万二〇〇〇。数では圧倒的不利、ほんで正面からの激突。当初の計画に沿っとった第四艦隊が敵に対応出来よるワケがおまへん」
「弱輩者のくせに不愉快な事を言うな!ここから出て行け!!」

豪放ながら粗野な人物として知られる中将の罵声に周囲の指揮官たちは怯えの色を顔に浮かび上がらせるが、罵声を浴びせられた方は意に介していない。

「出て行け言われたんで出て行くけどな、後背―――特に四時か五時方向に気ィつけた方がええと思うで。第四艦隊を粉砕した敵さんが時計回りでウチ等の後背を衝くんは目に見えるさかいな」

平次は不敵な眼光を上司に突き刺し、部屋を出る時にわざわざ入り口で立ち止まってそう言い放って立ち去った。ムーアが再度罵声を上げようと口を開いたのを確認した彼だったが、直前に自動ドアが閉まり罵声は遮断された形となった。
扉が閉まったため内部の様子は分からないが、あの血の気が多過ぎる司令官殿の事だから部屋の中であらん限りの罵声を自分に、そして部屋にいる人間に八つ当たりをするのは容易に想像できる。

「人の意見を聞かんで、オノレの意見を押しつけるだけのアホに生命を預ける事なんぞ出来んわ」

そう呟いて平次はスラックスのポケットに手を入れたまま「ペルガモン」艦内通路を歩く。こんなところにいるより自分の艦に戻って帝国軍への対策を考えた方が余程マシだった。


続く


注:「銀河英雄伝説」は田中芳樹先生、「名探偵コナン」「まじっく快斗」は青山剛昌先生の著作物です。
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